日本の小売店舗数及び売上高の推移は、経済産業省(旧通産省も含む)の調査(商業統計表)によりますと、次の通りとなっています。

           小売店舗数     売上高
           (単位:千店)   (単位:百万円)
1968年(S.43)   1,432       16,507,256
1976年(S.51)   1,614       56,029,077
1979年(S.54)   1,674       73,564,400
1982年(S.57)   1,721       93,971,191
1985年(S.60)   1,629      101,728,812
1988年(S.63)   1,620      114,839,927
1991年(H.03)   1,591      140,638,104
1994年(H.06)   1,500      143,325,065
1997年(H.09)   1,420      147,743,116
1999年(H.11)   1,407      143,832,551
2002年(H.14)   1,300      135,999,280
2004年(H.16)   1,238      133,278,631

 以上のように全国の小売店舗数は、1982年の約172万店をピークに、2004年には約124万店にまで減少してしまいました。現在でも減少傾向は顕著です。1982年から比較して見ますと、約50万店が世の中から閉鎖してきた事となります。しかし、この単純比較で判断するのは早計です。何故ならば、この25年間に閉鎖した店舗もあれば、開発された店舗もあるのです。私の予測では、実質的に消えた店舗数は75万店から100万店にも及ぶものと考えています。しかも、その大半が既存商店街と老朽化したショッピングセンターにある店舗なのです。

 つまり、全国の中小零細小売業者がその殆どであるといっても過言ではありません。事実、商業統計表でも減少した店舗は、従業員数1名から5名の零細小売店が多くを占めています。
 では、何故このような悲しい事となってしまったのでしょうか?

 答えは簡単な事です。生活者(消費者)ニーズへの対応がなされなかったということに尽きると思うのです。中小零細小売経営者には彼らなりの理由が存在します。

1.景気が悪くなってしまった。
2.近隣に大型店が出来てしまった。
3.店は古く、改装したくても資金がない。
4.メーカーが取引をしてくれない。
5.金融機関が融資をしてくれない。
6.従業員が来てくれない。
7.商店街での足並みが揃わず、アーケードすら直せない。
8.息子が帰ってきてくれず、経営者2世がいない。
9.店の周辺の居住者が老齢化してしまった。
10.行政機関が協力をしてくれない。

 等など、類似した理由を挙げれば、何百と出てきます。しかしながら、どれも全部「他のせい」。本質は違うのです。

 生活者ニーズとは、時代に適応した「立地」と「規模」と「施設」、そして「品揃え」であり「店揃え」なのです。これらに対応することなく「他人のせい」にしても、お客様は決して来てはくれません。

 改正まちづくり3法(大店立地法、都市計画法、中心市街地活性化法)が施行されました。これによって、「今後は1万㎡を越える大型店・ショッピングセンターは出きなくなり、中心市街地が優遇される。」と考えている商業者がいましたら、これは間違いの元です。
 国は本当の生活者ニーズと生活様式(ライフスタイル)、そして商業集積体の成立要件について、理解している人は皆無といっても良いでしょう。

 昔々、今から34年前(昭和49年)大規模小売店舗法が施行された時、全国の中小零細小売業者は、この法律により救われると思いました。あるいは法律を盾に戦い、中心市街地への大型店出店凍結なども行ってきました。現実は、凍結区域の外(郊外)に大型店・ショッピングセンターは開発され、今は死語となった「ドーナツ現象」が起きたのです。凍結が終了した時には、生活者は郊外への買物にシフト替えし、中心市街地には戻ってはこなかったという実例は全国に沢山あります。

 この3法も落とし穴だらけで、商業地域、近隣商業地域、準工業地域に大型店出店エリアを限定しています。しかし、プランの立て方と地域次第では、店舗面積1万㎡をいくらでも超える事は可能です。又、大都市圏であるならば、東京のミッドタウンや新丸の内ビル、表参道ヒルズなどの例のように大規模開発も可能ではあるでしょう。しかし、都市圏域でも、少し中心からはずれれば、このような開発は考えにくいものがあります。

 このような過去の繰り返しをしない為にも、小売業を取り巻く環境の変化を的確に判断し、今何をしなければならないのかを考える事が重要であると思います。私共は今後その具体的な方法論を提案してまいります。

 今回の「一言」にご意見のある方は、どしどしお寄せ下さい。